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Career Creation STORY #15:通訳者 大西亮平さん

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Career Creation STORY #15:通訳者 大西亮平さん
今回インタビューをさせていただいたのは、英語通訳者としてフリーランスで活躍されている大西亮平(おおにし りょうへい)さんです。大西さんは、神戸市外国語大学外国語学部英米学科を卒業後、新卒で教育会社に入社、その後転職しました。派遣の通訳者としてのお仕事を経て、正社員の通訳として働き、現在は独立して活動されています。お仕事の傍ら、大学院にも通っているようです。

インタビューでは、大西さんの学生時代から今に至るまでのキャリア、現在のお仕事、そのやりがいについてのお話を聞かせていただきました。この記事では、大西さんがどのような思いで通訳のお仕事と向き合っているのかについてもお届けしていきます!


―目次―

大学内での会話は全て英語!?

―最初に大西さんの仕事内容について伺います。通訳の種類や専門分野・得意分野を教えて下さい。
ほとんど同時通訳を担当しています。コロナ禍において、通訳の形態がガラリと変わり、現在はオンラインでの同時通訳が多いです。対面ではここ一年半ほどやっていませんね。

通訳の分野についてですが、「なんでもござれ」「来る者拒まず」という姿勢でいます。担当することが多いのは人事、会計、財務、ITなどのビジネス系ですが、どんな分野でも対応できるように日々勉強し続けています。今度のお仕事では化学関係の通訳もするので、勉強しなくちゃなと思っています(笑)。

―次に、学生時代に打ち込んだことや苦労したことを教えて下さい。
当時は英米学科に所属していたこともあり、コミュニケーションの機会よりも文学を読む機会の方が多くありました。それに対し、とにかく英語の運用能力を極めたいという気持ちから、まずは英検一級、TOEIC満点、国連英検特A級を取れるよう勉強に励みました。結果は無事全て達成です!

国連英検特A級合格証

また、大学入学後にも関わらず大学入試問題を解くようにしました。推薦入学だったためセンター試験を受けた経験がなく、「どんなものだろう」とふと興味を持ちました。東大や京大などの入試問題も解きましたね。大学入試問題って結構面白いなということに気付いたんです(笑)。

他には、軽音楽部にも所属していました。ドラムやアコギを担当したり、ボーカルとして英語の歌を歌ったりと「勉強+音楽」のセットで英語に触れていた大学生活でした。

軽音楽部のライブ写真

―在学中、学内では英語だけで話していたというお話を聞きました。
当時の神戸外大は、留学生や帰国子女が少数に限られていました。「英語を話す機会が十分に得られないかもしれない」「環境を変えなきゃ」と考えましたが、自分で授業料も賄っていたため留学は厳しく、「じゃあここ(大学)を留学先にしちゃえばいいじゃん」という結論に至ったんです。英語が好きな人を数名集め「これからは英語で会話しよう」と決めまして。その内の一人とは今でも英語で会話をしていて、むしろ日本語で話すのが気持ち悪いぐらいです(笑)。

―様々なことを行っていたのですね!これらの経験は、今のキャリアに影響していますか?
どれもすごく影響しています。特に、大学入試問題を解いたことは、実は同時通訳にとても効いているんです。入試時は覚えていた英語も、時間が経つといざ通訳をする時に出てこなくなることがあります。しかし、英文法や英作文の問題を解いておくと、過去に習った忘れがちな文法や言い回しなどがすぐに出てくるようになるんですね。今でも時折、大学入試を解いていますよ。

学祭で英語スピーチをする大西さん(2009年)


「上手くいかなかったこと」もチャンスのうち

―英語を使用する職業は様々ありますが、その中で通訳という職業を選んだのはなぜでしょうか。
きっかけは、新卒で入った教育会社を一年足らずで辞めたことです。英語をそれなりに勉強した自信もあったため、英語を教えられると思いきや任されたのは小学生の算数と国語でした。新卒なら仕方ないと思いつつ、自分のやりたかったことはこんなことなのかとくすぶっていましたね。その時、会社の同期が「世界一周の通訳があるんだよ」と勧めてくれたんです。条件とも合致していたため、試験を受け合格、通訳者として世界一周することになりました。この一連の経験により、英語を使うなら何でも良いというわけではないことに気づきました。新卒で上手くいかなかったことや、同期の一言が今に至る大きなきっかけとなりましたね

世界一周船の旅 ピースボートでの写真

―現在はフリーランスでご活躍されていますが、そのきっかけは何でしょうか?
コロナの影響が大きいです。社内通訳時代では稼働時間が減り年収も下がって、「じゃあフリーランスに転身しても変わりないんじゃないか」と。フリーランスになって一年半ほど経ちますが、大正解だったと感じます。台湾の政治家 オードリー・タン氏の通訳を任されたのも、フリーランスになったおかげです。

人と人とを繋げ、期待を超えていく 〜ステップとやりがい〜

―通訳者になる過程でどのようなステップがありましたか。
雇用面」「技術面」の2つの観点からお伝えしますね。
最初に、雇用面ですが、新卒で正社員の通訳者、というパターンはほとんどありません(公務員として神奈川警察の通訳職などはある)。教育会社を辞めた後、第二新卒として就いたのは派遣通訳でした。そこでの2年間は特別で、次に繋がるいいステップとなりましたね。派遣時代を下積みと考え、次の契約社員や正社員としての雇用に繋げていくこともアリではないかと思います

次に技術面についてです。同時通訳を初めた頃から今に至るまでを、三段階で表せることに気づきました。まず「①条件反射的に通訳」し、「②機能ベースで通訳」し、最後に「③意味を通訳」する、という段階に至るんです。

「①条件反射的に通訳」の段階では、文字通り、条件反射で言葉に食いつくように訳します。最初のステップですね。しかし、そのままでは追いつかなくなる時がきます。そこで次の「②機能ベースで通訳」が登場します。機能ベースの通訳とは、言葉の機能を考えて通訳をすることです。例えば、“I think that 〜”を日本語に訳す時、「私は思います」ではなく「おそらく」に変換します。「思う」ということは「確信している」ということなので、「おそらく」になるんです。ただ、機能ベースでも上手くいかない場合があります。その時には「③意味を通訳」するんですね。今、特に大事にしていることです。言葉を超えたところまでイメージをして、それを自分の言葉で説明します。この段階では、発言者の思想・哲学をあらかじめ理解しておくことにより、発言者の意図を踏まえた訳をすることができるようになります。

―ズバリ、大西さんにとって、通訳という職業のやりがいは何でしょうか。
やりがいは、「自分の通訳で、人と人とを繋げることができる」ということです。例えば日本人が話していて、海外の人が同時にうんうんとうなずいている時、「まるで魔法使いになったみたいだ」と感じるんです。人同士が自分の通訳で言語の壁を超え、繋がっている様子を目の当たりにすると、たまらなく嬉しくなります

通訳として10年ほどキャリアを重ね、「通訳はあくまでも自分本位ではなく他人本位」という気付きを得たことが今のやりがいに繋がっていますね。通訳は、人と人とを繋げてなんぼの職業なんです。

やりがいは他にもあります。期待を超えていくこと、そして安心と学びを与える存在となることです。つまり、「大西さんの通訳は聞いていてわかりやすい」と言ってもらえるようにする。ここが腕の見せ所で、期待の超えどころです。また、「大西さんの通訳なら安心できる」「大西さんの通訳は聞いていて勉強になる」と言っていただけるとき、やりがいを感じます。

学びのスイッチをオンにできる力

神戸通訳ツアー

―大西さんにとっての、通訳者として大切な視点は何でしょうか。
哲学的な話になりますが、最近は「美意識」が大切だと考えています。ただ訳すのではなく、場面や話者の人となりに即した言葉の選び方をする。美意識を持てば持つほど本を読みたくなるし、秀逸な表現や言葉の響きに感動するようになるんです。

大切な視点はもう一つあります。「学ぶという姿勢を持つこと」です。自分が今まで触れてこなかった事を学ぼうという時に、すぐさまスイッチをオンにできる力が重要ですね。

経験を還元していく

―今後のキャリアビジョンについて教えてください。
まず「人に自分の経験を還元していくこと」です。現在大学院に所属していますが、私が獲得してきた通訳のノウハウを後輩に教えていきたいと思っています。また、「“学ぶこと”を広く考える」活動もしていきたいです。現在YouTubeで通訳についての動画を配信していますが、今後は通訳以外の新しいジャンルを開拓して、様々なことを視聴者と一緒に勉強するコミュニティを作ってみたいと考えています。

大西さんが開設したYouTubeチャンネル

キャリアは自分で決めるもの ––––思考停止にならないために

―最後に、学生に対するメッセージをお願いいたします。
「自分のキャリアを他人が決める資格はない」「思考停止になってはいけない」ことを伝えたいです。新卒の時、会社を辞めて通訳になると伝えた際、直属の上司には了承をもらえたんですが、更に上の上司には反対されました。「通訳者は狭き門だよ」と。でも、自分のキャリアは自分で決めるものだし、通訳をしたこともない人や根拠もなく止めにくる人のことは無視しても良いんです。自分で選んだからには完全に自己責任であるところが厳しいですが……。思考停止で人に流されて失敗したら、後悔しか残らないですよね、と東大医学部生がYouTubeで言っていました。自分で考えて行動したなら、後悔は残らないけど経験はちゃんと残ります。学生の皆さんには、「自分はこうしたい」を軸にやっていくことを大切にして欲しいです。

インタビュー後記

大西さんの、通訳というお仕事に対する思いを通して、「自分がどうすればワクワクするのか」を常に考えることが大切だと感じました。それは就職をする時だけでなく、仕事に就いてからも大切だと思います。安定を求め仕事をただこなすのではなく、たとえ回り道だと感じたとしても、自分がそうした方が良いと思うならそうしてみる、という経験を重ねること。それは、自分のキャリアとなり、加えて自信にも繋がるのだと思います。
インタビュー当日、緊張していた私に気さくに接してくださり、安心することが出来ました。また、質問にわかりやすく丁寧に答えていただき、自分もこんなふうに筋道立てて話せるようになりたい、と感じました。とても楽しく勉強になる時間でした。改めて、お忙しい中貴重なお話をありがとうございました!

(インタビュアー:ECCL修了生 大学2年 長野美希)

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