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Career Creation STORY #10:studio-L 渡辺直樹さん

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Career Creation STORY #10:studio-L 渡辺直樹さん
今回インタビューさせて頂いたのは、studio-Lで地域活性化のプロジェクトを数多くされている渡辺直樹(わたなべ なおき)さんです。渡辺さんは大学時代、大学生のみで海外インターンシップを経営するNPO法人アイセックに所属されていました。大学卒業後は、富士通株式会社に入社。2013年に同社を退社後、studio-Lに参画しています。

インタビューでは、学生時代から現在のお仕事のお話を通して、渡辺さんの「働く」ことへの考え方や、大切にされている価値観についてお伺いしました。


―目次―

「停学」が自分の原点

―本日は、ありがとうございます!はじめに、学生時代、NPO法人アイセックに入った理由を教えてください。
大学に行くなら社会で生きていくための選択肢を増やしたいと思い、今までなら絶対にやらなかったことをやろうと決めていました。そんな中で見つけたのがアイセックです。海外へのインターンシップを大学生自身で運営しているNPO法人で、今まで自分が見たことも体験したこともないものが詰め込まれてそうだと思い、参加しました。


―大学生のときから、NPOに入るなんてすごいですね!

高校でバレーボール部に入っていたんですが、実は途中、右肩を脱臼して満足にプレーできなくなったんですよね。もともと勉強もしていなくて、精神的に辛くなっていたところで問題を起こしてしまい、停学処分を受けてしまいました。
停学での一週間の自宅謹慎の間、学校に行く意味や生きる意味がわからなくなり、不安になりました。しかしそもそも、「高校や大学、会社は行かなくてはならないもので、決められた道を辿るしかない」という思い込みが頭の中にあることに気づきました。「生き方は自分で考えて選択して良い」、そう思えたことが自分のターニングポイントだったと思います。

―「自分で考えて選択して良い」、当たり前だけど難しいことだと感じます…
そうですね。私はこの考え方を持てたことで、大学では未知の体験を重ねようと思いました。その先に、“アイセック”という選択肢があったのです。アイセックの活動の中で特に印象に残っているのは、ブラジルで行われた国際会議です。この会議には120ヶ国の代表者が参加していて、言葉が通じない人ももちろんいます。それでも、お互いに何かを共有したり分かり合えたりすると、国籍が違っても仲良くなることができることを学びました。この経験は、今の仕事で様々な考えを持つ住民の方々と関わる時に活かされています。何か共通の体験をすると、背景の違う大人同士でも仲良くなることができます。

自分の心に正直に進む

―富士通株式会社への入社理由を教えてください。
ぶっちゃけると、大企業に入りたかったからです(笑)。大学時代はNPO法人で活動していましたが、お金などの資源が少ない状態の中で活動していたんですよ。なので、資源を多く持っている大企業はどう運営されているのかを知りたいと思いました。
他にも、ITや機械に関わりたいと思っていましたね。大学時代はアイセックでのインターンシップ運営を通じて、人材育成のことを考えることが多かったのですが、全く違った領域に触れたい・知りたいという気持ちもありました。

―転職をしたきっかけは何かありますか?
富士通では営業を担当していましたが、社外ではファシリテーターとしても活動していました。アイセックの先輩が提供するワークショップに誘ってもらい、仕事としても依頼してもらえるようにもなり・・・。自分がファシリテーションしたワークショップに参加した人たちが商品を開発して起業している様子とかを見ると、ファシリテーターの経験をもっと社会で活かしたいと思いました。営業とファシリテーター、どっちが楽しいかなと考え、一旦辞めてみよう、くらいの気持ちで辞めました(笑)。

―studio-Lへの参画を決めた理由を教えてください。
富士通を辞め、ファシリテーターとして個人で活動していた時は、実は地域活性化についてあまり知りませんでした。そんな時、地域で活動をしている大学時代の友人と話す機会が増えて、面白そう!と思ったんです。勉強を進めると、「コミュニティデザイン」という言葉に出会いました。当時はコミュニティデザインという言葉を調べていくと、行き当たるのはstudio-L代表の山崎亮さんの本や記事ばかりでした。「studio-Lで仕事をしてみたい!」と思い、参画を決めました。

地域の人が主役になる仕事


―studio-Lの活動内容を教えてください。

一言で言えば、「地域コミュニティと一緒に何かをデザインすること」ですね。デザインは課題を解決する方法の一つであり、その過程を通じて、地域の人たちが自分たちで課題を解決していくことを目指します。例えば地域で新しい公園や図書館、計画などを作る時にはプロの人に頼むため、地域の人たちは完成したものに愛着がわきづらいうえに、どう活かしていけば良いのかもわかりづらいです。一方studio-Lは、つくる過程から地域の人たちと一緒に取り組み、自分たちで使いこなせるようにサポートします。

―仕事の中でやりがいを感じるのはどのような時ですか。
関わった人の変化の瞬間に立ち会えた時です。約40年会社勤めだったシニアの方が初めて公園づくりに関わられて、こんなことが自分でもできるのか!と初めて知り、イキイキとする瞬間を多く見てきました。こういう変化の瞬間に立ち会えているのは、面白いです。

―逆に、仕事の中で大変なことはありますか。
例えば、大阪府営・泉佐野丘陵緑地という公園のパークマネージメントに関わっていますが、ここでは「パークレンジャー」という公園をつくるボランティアが100人ほど参加されています。ほとんどの方々は自分よりも年上ですし、会社と違って動機や背景も多様です。自分がどのように関われば前向きに活動が進んでいくのか、かなり試行錯誤しました。
思い返すと、アイセックの経験が活きましたね。アイセックも学生がボランティアで運営するNPO法人だったので、お金ではないモチベーションづくりが課題でした。コミュニティデザインでも同じで、お金のためではなく、様々な理由で集まっている方々が気持ちよく活動できるにはどうしたらいいか。対話を重ねて一人ひとりを知りながら進めることが大切だと思っています。

仕事で得た「自信」

―これまでの仕事を通じて自分が成長できたと思う経験について教えてください。
「成長」とは何かな、と思うこともありますが、自分としては新しいことができるようになった時が成長だと思っています。「仕事を通じて」という意味では、コミュニティデザインに8年ほど取り組むことで、どんな人とでも話せるようになったことですかね。

富士通で働いていた時は、ビジネスに必要なコミュニケーションスキルを教えられましたが、それは「コミュニケーション能力」のほんの一部にすぎないと思っています。今もし、行ったこともなく知り合いが一人もいない地域に引っ越したとしても、イチから友達やコミュニティをつくる自信があります。そう思えるようになったことが、最も大きな成長かもしれません。

気楽に楽しい就職活動を!


―渡辺さんにとって「働く」とはなんでしょうか。

質問に答えられているか分かりませんが、最近、「働く意味」を考えなくなりましたね。僕は自分自身が面白い・楽しいと思えるものを自分で選択してきた結果が今なので、「仕事が面白いからやる」、単純ですがそれだけです。結果的に「誰かの役に立っていたら嬉しいな」、そんな感じで働いています。
地域の人たちに、「やりたいこと」「できること」「求められていること」の3つが重なる所が一番やりがいを感じるところだと話すことがあります。重なった部分を仕事にすると、辛い気持ちで仕事をすることは無くなるのではないでしょうか。僕はこの“重なり”で活動できているので、悩まずにいれているのだと思います。

―今後のキャリアビジョンなどがあれば教えてください。
正直に言えば、あまり考えてないです(笑)。というのも、富士通に入社した時は、ここで10年ほど働くだろうなと思っていました。でも実際は3年半で辞めちゃったので、未来はどうなるか分からないなという感じです。
極端な話、10年後に今の仕事をしていなくてもいいと思っています。新しい出会いがあって、もっと楽しいことが見つかっているかもしれないですからね。
「キャリア」=仕事のように聞こえますが、僕は「人生をどう楽しんでいくか」という視点で考えています。

―最後に、記事を読む学生へ一言メッセージをお願いします。
僕は就職をする時に、やりたいことが特にありませんでした。アイセックに入った時も、「やりたいこと」というよりは、「こういうことができるようになるとよさそうだ」という視点で考えていました。自分の「やりたいこと」で就職を考えると、少し視野が狭くなるんじゃないかと思います。今自分が思いつく「やりたいこと」の大半は、今まで生きてきたたった十数年間の経験に基づくものだと思うからです。自分が知りたいこと、知らなかったことを勉強する場所として、気楽に就職先を選ぶという考え方でも良いと思います。色々な視点で就職活動をしたら人生が楽しくなるのではないでしょうか。

インタビュー後記

渡辺さんがお話の中で、何度も「楽しい」「面白い」とおっしゃっていることが印象的で、自分が楽しいと思う道を選択する、という行動を繰り返されてきたからこそ出てくる言葉なんだろうなと思いました。私はこれまで、様々なことを「将来に役に立つから」という理由で選択することが多かったのですが、これからは、自分が楽しいと思うことに積極的に行動を起こしていきたいと思います!
渡辺さん、今回はお忙しい中お時間をいただき、誠にありがとうございました!

(インタビュアー:ECCL修了生 大学2年 藤田澄菜)


※パークレンジャー:泉佐野丘陵緑地が開催する「パークレンジャー養成講座」を修了したボランティアのこと。2014年のオープンより5年前から現在まで毎年開催されており、studio-Lは初期から講座の運営をサポートしていた。パークレンジャーは公園の計画や設計、イベント運営などのソフト面や、園路や広場の整備などのハード面にも関わっている。 




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